Page 31 - 権五石会長の人生のエッセイ J01
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そんな私の考えをどうして父が知らないだろうか? そのせいか、父は私が試合
で勝った時、人に内緒でどこかで見守りながら 喜びを共にしてくれて、負けた
時もいつも悲しみを共にしてくれた。
「そんな父を恥じたという自分自身が恥ずかしい。」
気弱な父が、弱い父が、無能な父が、その当時限りなく恥ずかしく感じられた父
が、今日になってなぜこんなに恋しいのか分からない。
能力があるより、実利があるより、強い父でなくても、ただ私に父のままでもい
いから生きていてほしい。
そのまま生きていればそれで十分だ。 ただ息をするだけで十分だ。
私の胸と父の胸が出会うことさえできれば、それで十分だ。
初めて呼んでみる。
「お父さん」
「お父さん、大好きです。そして申し訳ありません。」
「お父さん」という言葉、 いくら呼んでみてもまた呼んでみたい懐かしい単語
だ。
「お父さん、本当にごめんなさい。」
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丹陽八景の中のツバメ棒全景
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