Page 34 - 権五石会長の人生のエッセイ J01
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家族全員に肉を食べさせる余裕がなかったのか、私だけこっそり連れて行って
肉を食べさせ、服から肉の匂いがすべて消えた後に家に帰って来いと言ったり
した。
そんな母の熱い愛を全身で感じながら生きてきた。
当時はみんなが困っている時代だったので、
どの親であれ、苦労したことのない親はいないだろうけど、
私の母は特に苦労したようだ。
周辺でも「どうしてあんなに苦労して生きるのか」と舌をうつのが一度や二度
ではなかった。
大変でつらい時はいつでも、
母はいつも私たち3男4女だけをみて暮らしていた。
母はいつも言っていた。
女は女必三従で、生まれては親に従い、結婚しては
夫に従い、夫が死んだら子供たちに従うのが女の一生だといつも
話したりしていた。
そして母はその言葉通りに実行し、
姉や弟たちにいつもそのように教え、
私と男たちには男が自分の妻と離婚する時は必ずその妻が病気になったり、帰
る実家がなかったり、生きる他の方案がなかったりする時は絶対に妻を捨てて
はならないと教えてくれた。
少なくとも母にとって家庭は母だけの聖域だった。
必ず守らなければならず、またそれがあまりにも当然だと感じながら生きてき
たし、また、それを一生実践してきた人がまさに私の母だった。
母の影響を受けたせいか、私も家庭を守ろうととても努力した。
そんな私の心情を誰も理解できないだろう。
それが私も知らないうちに私の体にしみ込まれていたからだ。
母は近所の子供たちと喧嘩したり何か問題が生じたりすると、無条件で叱るこ
とは私たちにした。
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時にはそんな母が少しは不満だった。
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