Page 96 - 権五石会長の人生のエッセイ J01
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ミジョンさんは何も言わずにただ泣いてばかりいた。
私はうつむいてすすり泣いているミジョンさんに挨拶をしてその場所を出た。
彼女は私が出て行くのを見ることもできず、ただ泣いていただけだった。
豊基に向かう列車の中で、私はミジョン氏のその姿があまりにも哀れで、しき
りに目頭を赤くしなければならなかった。
私は彼女の姿を見て、私のあの子に私の愛を告白しなければならないと決心し
た。
私は家に入るやいなや母に挨拶をして、その子に会おうと外に出た。 出たとこ
ろ、母の声が背後から聞こえてきた。
「大家さんの娘、結婚するんだって。」
母は思わず私に言った言葉だったが、
その瞬間、私は全身の力が抜けるのを感じた。
私の目の前は急に真っ暗になった。 どうしよう?
私は家を出たついでにその子の妹のミョンヒに会った。
ミョンヒの口から母の言葉が事実であることを確認できた。
栄州に住んでいる中央大学を出た男性と結婚するということだ。
私はその子に会う勇気がなかった。
私はあてもなく、堤防の上と橋の下、どこなのか分からないところを一晩中歩
き続けた。 いくら考えても答えがなく、ただ胸が苦しいだけだった。
「私があの多くの困難の中でもよく耐えられたのは、ひたすらその子を愛する
という気持ち一つだけだったのに…」
私は結局、その子の家の前でしゃがんだまま徹夜してしまった。 明け方にトイ
レに行くその子の影を隠れて見守りながら、胸が痛くて心の中で泣いたその日
のその胸の痛む記憶が数十年が過ぎた今も消えないつらい思い出として残って
いる。
その日、私は結局その子に会う勇気がなくて部隊に戻ってしまった。 休暇を終
えて帰ってきてもとても苦しんでいる私の姿を見て…
ある同僚は私に「彼女に裏切られたのか?」と尋ねるほどだった。 しかし、彼の
QR
質問は私の場合に適合しないものだった。
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