Page 72 - 権五石会長の人生のエッセイ J01
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私は帰りながら,獣医の温かい心遣いにとても親しみを感じた。
私たちの社会が皆この獣医のような気持ちさえ持っていれば…
残念ながら犬は助けられなかったが死んでいく犬の立場から見て、
それでも誰かが自分を生かそうと努力したのをわかってから行ったと思うと、
何故か胸が暖かくなってきたし、私としては命を助けようと最善の努力を尽く
したから恥ずかしくなかったし、そんな自分自身に感謝した。
二つ目の犬に関する話だ。
サムジョン洞35-16番地の半地下に住んでいた時だが、
大家の犬一匹がとても私に懐いた。
家に帰る時は喜んでどうしようもなく、しっぽを振って嬉しく私をいつも迎え
てくれた。
そんなある日、学生だった私が大学に講義を受けに行く途中で事が起きてし
まった。
私はいつも夜明けにテニスのコーチをして、昼には大学の授業を受けて、
夕方には庭球場にライトをつけてまたコーチをして...
たったの1分1秒が大事な時だったから、常に朝レッスンをして家に帰っては顔
を洗って学校に行くのに忙しかった。
蚕室病院前で137番バスに乗って華陽市場入口で降りて学校に行ったりしたが、
その日もいつものように夜明けレッスンを終えて家で着替えて授業を受けに
走っているところだが、しきりに鈴の音が後ろから聞こえてきた。
振り向くと子犬が私を追いかけてきているのだった。
行けと叫ぶと逃げてもまた追いかけてきて、また叫んで送るとまたついてくる
から、もっと大声を上げて犬が逃げる隙に早く道を渡って隠れてバスを待って
いた。
子犬はあちこち私を探そうときょろきょろして帰りそうになった時バスが来た。
出勤時間だからお互いにバスに乗ろうと走っている途中、偶然子犬と目が合っ
た。
子犬はびっくりしながら飛び跳ねて、私がいる方に矢のように走ってきた。
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