Page 61 - 権五石会長の人生のエッセイ J01
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続けて…

         「そしてもう喧嘩するな~」と言った。

         そうして父は亡くなった。
         母も家族も声を出しながら泣いていたが、

         私はまったく涙が出なかった。

         私はぼんやりとしばらく立っていたが、とぼとぼ歩いて病院の外に出た。
         その時はもう真夜中だった。




         しばらくぼんやりと安東市内を歩いた。

         そうするうちに、ふとあんなに咳をしていた父の姿を朝食の食卓で二度と見る
         ことはできないと思うと…

         その時から涙なのか、鼻水なのか、何か熱いものがただ流れ落ちた。

         お金さえあれば、手術費さえあれば、こんなに虚しくは死ななかったはずなの
         に、貧乏というのが恨めしかった。

         お金というのは何なのかそのお金に恨みを抱く。

         幼い私だったが、貧困に対して痛切に痛みを感じる瞬間だった。

         お金がなくて無力に死を強いられなければならない父を見て…



         父の死は私に多くのことを考えさせてくれた。

         健康であることがどれほど大きな祝福か、
         生きて自分の考えを持っていることがどんなに大きな祝福なのか、

         人はなぜ生きているのだろうか? またどう生きるべきか···

         一体どう生きてこそ上手く生きることで、人らしく生きる道であり、後悔のな
         い生なのだろうか?




         私はあまりにも多くの質問を持ち始めた。
         貧しさって何だろう?  無智って何だろう?

         なぜ人々はそのように「勉強、勉強!」というのか?

         まさにその時から私にはすべてが疑問だらけだった。



         その時、ふと父が亡くなる時に言った言葉と、父が生きていた時に私を見なが
                                                                                                      QR
         ら言った言葉が思い出した。


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